NoTitle
- 2019/06/28 18:20
文マヨ/くにきださんネームレス夢/『文スト』ではなく『文マヨ』です
――全く以て思い通りに事が進まない。
彼の男の御陰で、俺の毎日毎時毎分毎秒が狂わされてばかりだ。
莫迦の所為でずれた予定を立て直そうと机に向かい、取りかかる前に、一度眼鏡を外す。目頭を押さえて仰のき、数秒両眼を休ませる。すると、誰かが電灯を遮ったのだろう、閉じた視界が薄く翳ったのが判った。
ゆるりと瞼を持ち上げる。其処にあったのは事務所の象牙色の天井――ではなく、微笑いながら俺の顔を覗き込む一人の女性だった。
「眉間に皺、寄ってますよ。いつもより深めに」
そんな事は判っている。返事の代わりにねめつけるが、彼女は気を悪くするどころかくすくすと笑う。
「余計な御世話だ、この、」
ならばと皮肉を言い終えるよりも早く、彼女は、
「優しいお顔に戻りますように」
湛えた微笑みを変えぬ侭、俺の額へ文字通り唇を落とした。
そうして逆光で影を帯びながらも確かに頬を赤らめ、ビニルのタイルを蹴って足早に自身の仕事へと戻った――と、思われる。
と云うのも、ほんの刹那だけ外でもない俺の記憶が途切れたからだ。いや、実以て極僅かに予想外の出来事だったので、ほんの一弾指の間、驚嘆していただけなのだが。
「おやぁ、一弾指と云うには少々長かったようだけどね?」
「喧しいわ太宰ィ!!」